ルアーメイキングへのお誘い |
Report by ぱわぁほ〜る
[ルアーフィッシングのきっかけ]
ぱわぁが釣りを始めたのは小学校に入るか入らないかの頃でした。今は亡き父の後をついていって一緒にやらせてもらったのが始まりです。最近、「釣りを教えて」なんて友人に教えたりすると、当時の自分に釣りを教えるのはかなりしんどかっただろうな・・・と思います。良く我慢強く教えてくれたもんです。沢山怒鳴られましたけどね。
そうやって釣りのイロハをたたき込まれたぱわぁも、それから何年かすると友達と釣りに行くようになります。実家は鬼怒川の中流域のすぐ近所。フナやコイ、ヤマベ(オイカワ)などを釣りに良く行きました。それから、中学までは釣りと言えば近所の鬼怒川で餌釣りをすることでした。
そんなぱわぁに『ルアーフィッシング』と言うものを教えてくれたのは名作『釣りキチ三平』でした。そして、バスを始めいろんな魚がルアーで釣れるということも知りました。父のタックルボックスの中に入っていたへんてこな金属の固まりに針がついているのも、それがルアーというものだと初めて知りました。でも、それで釣れる魚が近所にはいないということも知って悔しい思いをしていました。[ハンドメイドと言う言葉との出会い]
高校に入り、交友範囲も行動範囲も広がると今まで知らなかった情報が入ってきます。お小遣いも増えて、ほしい物もちょっとだけ買えるようになってきます。
そんな時に、ふと本屋で一冊の本を買いました。それは、平野正博さんの書いた『ブラックバス釣り入門』という本でした。内容はごく普通の入門書です。が、この本には巻末に『ルアーの作り方』というのが載っていたんです。平野さんは『リベット』というハンドメイドミノーのビルダーですから、おまけ程度というにはもったいないくらいの内容で説明が載っていました。そして、そのときに初めて『ハンドメイド』と言う言葉に出会ったのです。
『ルアーって、自分で作れるんだ!!』これは、ぱわぁにとって衝撃以外の何物でもありませんでした。ルアーっていうのは、金属やプラスティックでできている堅い物で、バルサのような柔らかく弱い木で作ったらひとたまりもない物だと思っていたのです。
当時の釣りに関する環境はと言うと、国内のいくつかの大手釣り具メーカー製や輸入品の高価なルアーが釣具屋に申し訳なさそうにひっそりとあればいい方でルアーなんて釣れないから売れないとでもいうように取り扱っていない釣具店が大半でした。あっても、安物はそれなりの作りで『これで魚が釣れるの?』と思うような物だったりしました。現在のようなプロショップがあちらこちらにあって沢山のメーカーから様々なルアーが開発・販売されているような状況は全く想像がつきませんでした。
そんな状況で、ルアーを入手することがほとんど困難なぱわぁのルアーフィッシングに対する憧れが増加する中、『ハンドメイド』という言葉と出会ったのです。
幸い、小さな頃からプラモデルを買ってきては作るという事もやっていたので、道具や手順で困ることはありませんでした。ただ、セルロースやウレタンのようなコーティング材はなかなか入手できませんでしたが。[最初の一本]
そうして見よう見まねで作ったルアーができました。まともにコーティングもできず、ホイルを貼らずにボディを銀色に染め、エアガンもなかったので手塗りで背中や腹の色を塗った最初の一本は、今見たらとても見られない物だと思います。残念なことに、無くしてしまったのですが。
当時の自分にはとても上出来の物でした。一応、クリアラッカーでコーティングもして、針をつけたら何か釣れそうな気がしました。そして、何本か作りました。
そうなると、こいつらで何か釣ってやりたくなるのが人情です。でも、ブラックバスっていうのは芦ノ湖や奥多摩湖のように家から遠くの山の湖に行かないと釣れない物だと思っていました。[最初の一匹]
そんなぱわぁに幸せが舞い込んだのはそれからすぐのことでした。高校2年のクラス替えで知り合った友人が、結構いろんな情報を持っていました(そういやぁ、初めて渓流釣りを教えてくれたのも彼だっけ)。そして、家からちょっと遠いけど、バイクで行ける距離の池でバスが釣れるらしいという情報を教えてもらいました。早速、その場所に連れていってもらいました。
ぱわぁのタックルボックスにはそれまでに買ったクランクベイトと安売りのワーム。そして自分で作ったルアーでした。最初は、買ったクランクベイトを沖に向かって投げていました。夕方になり、日が傾いてくるとノーマークの岸際でバスのライズがありました。
そのとき、トップで使えそうなルアーは買った物にはなく、自分の作ったルアーでした。シャッドタイプのような形なのに何故かサーフェスプラグで、水面をただ引かれてくるだけの、全くアクションをしない物でした。
それを、ライズのあった場所へキャストして、スーッと引いてはちょっと止めのストップ・アンド・ゴーのリトリーブをすると、ルアーの引き波の後ろにもう一つ同じような航跡が生まれました。そして、「ガボッッ!」と言う音とともにルアーのあった水面が炸裂しました。同時に、ロッドにテンションがかかりました。一瞬、訳が判らず、バスがヒットしたと思ったときにはもうロッドは軽くなっていました。
悔しくて、もう一度同じところへキャスト、リトリーブをすると・・・同じようにもう一つの航跡が生まれました。そして・・・「ガボッッ!!」と同じように水面が炸裂。ロッドにテンションがかかりました。
たった今、何が起こったのかを学習したばかりです。すかさずロッドをあおってフックアップさせました。激しく水面をジャンプする初めてのバスのファイトに感激しました。釣り上げたバスは20cmとちょっと。小型です。それでも、そのバスはそれまでに釣ったどの大物よりも大物に感じました。何より、自分で作ったルアーで釣り上げたのです。感激は今までの中で最高でした。[ハンドメイドへののめり込み]
それから、バス釣りとルアー作りにドップリとはまりました。ルアーを作ってはその池に通いバスを釣る。もちろん、思い通りになんか行きません。それでも、自分の作ったルアーでバスが釣れるというのは今までの釣りにない喜びでした。滅多に釣れない中で釣れた一匹。その一匹の価値は、市販のルアーで釣った一匹と比べて遙かに大きいものでした。
そうして、大学に入り車の免許も取得し、その後就職・・・と行動範囲も交友範囲もさらに広まり、自分の自由にできるお金も増えてくるといろいろな所でハンドメイドルアーを使い魚を釣るようになりました。
もう一冊、ぱわぁのルアー作りに多大な影響を与えたのが『ザ・ミノー・メイキング』と言う本でした。これは、ハンクル・ムラセ・ナベミノー・リベットというトップブランドのビルダーが惜しげもなくそのテクニックを公開してくれた本でした。初めて読んだときには目から鱗が沢山落ちました。その本を見て、コピー品を作ったりもしました。そういう中で、自分の型がある程度できあがってきたと思います。
そして、少しずつ釣った魚の種類も数も増えていきました。ブラックバス。ヤマメ。イワナ。ニジマス。ハヤ。メバル。シーバス。メッキ。カサゴ。ソイ。淡水から海水へと気がつけば行動範囲はさらに広がっていました。そして、釣った魚もさらに増えていきました。まだまだ増え続けてくれるでしょう。だって、まだまだ釣ったことのない魚が沢山いるんだから。[何でハンドメイドにこだわるの?]
現在、ルアーフィッシングの市場は飽和状態に近いのではないでしょうか?大型量販店やプロショップも至る所で目にすることができます。そして、中に入ってみると沢山の種類のルアーがこれでもかというくらいに陳列され、それを選ぶだけでかなりの時間を費やしてしまいます。
もちろん、メーカーも昔と比べるとかなりの数に増え、その開発する製品はぱわぁがミノーを作り始めた頃に比べると格段に進歩しています。リアルタイプの少なかった昔とは違い、今ではどこのメーカーの製品もかなりリアルです。ついつい、アングラーがショップでリアクションバイトをしてしまうくらいです(^^; 値段も、安いからといって粗悪品のような物は少なくなり(昔はねぇ・・・(^^; )ビギナーや年少者でも無理なく良い製品を手にすることができるようです。
じゃぁ、なぜぱわぁはハンドメイドにこだわるんでしょう?これは、一言『自己満足』と言う言葉で片づけてしまうのは悲しすぎます。でも、きっとそうなんですよね。
ハンドメイドミノー。自分で作る限りコストは安いです。原材料費だけを考えたら、ショップで売っているハンドメイドミノーはもう暴利以外の何物でもありません。でも、作る手間と時間と技術を考えたら・・・あの値段でも安いと思える物がたくさんあると思います。
作る手間と時間を考えたら、市販品の実績のあるルアーを買ってきた方が遙かに低コストでお手軽です。雑誌やインターネット等のメディアや様々な情報網を駆使して仕入れた情報を元に、ヒットルアーを揃え、メジャーポイントに入り、釣りをする。結果は、情報通りになるか、それとも全くのノーヒットで情報元を恨むか・・・。
でもね、そういうお手軽な関わり方も否定しませんけど、ルアーフィッシングの魅力ってそれだけじゃきっと満喫できてないと思いませんか?一つのルアーを眺めて、自分の通うポイントを思い浮かべ、戦略をいろいろと考え出して・・・という想像する楽しみ。そして、考えた戦略通りに魚をヒットさせたときの言いようのない満足感。そういう楽しみがルアーフィッシングにはありますよね。たった一つのルアーから楽しみが広がって行くんです。それが、もし、そのルアーが買った物でなく自分で作った物だったら・・・?きっと、その楽しみを味わう時間はさらに長くなるはずです。そして、喜びはさらに大きなものになるはずです。
どうです?ちょっとバルサを削ってみませんか?寒いからって炬燵に入って熱燗をすするのも良いですけど、炬燵に入っていてもルアーフィッシングの楽しみを味わうことができますよ。何の変哲もない木の切れ端が、あなたの想像力と手先によってもしかしたらすんごいミノーに変わるかもしれません。そして、そのルアーで魚をヒットさせた時を想像すると・・・ほら、もう顔がほころんで来ちゃうでしょ?