水難事故

Report by 雨海


[一体何が起きているのか・・・]

 私、今非常にブルーな気持ちでいっぱいです。ついさっき、所用のついでに大洗港の釣況を見てこようと中堤防付近に行ってみました。釣り人の数はまばらで、何も釣れている様子が無いなァと思って見廻すと、タグボートの横に海上保安庁の船が係留されており、その周りに人だかりが出来ていて警察の姿も見えました。
 近くに行って見ると、中学生くらいと思われる少年達が8〜9人地べたに座り込みうな垂れていて、その中の数人は泣いている様でした。その周りにいる大人達は皆じっと海上保安庁の船を見つめています。ほどなく1人の中年男性が船にいる警察官らしき人に呼ばれ乗り込んで行きました。

[とてつもない悲しみに包まれた空間が・・・]

 そこまでは車に乗ったまま見ていたのですが、一体何が起きているのかと車を降りてちょっと近づいて行くと、近くにいた男性が携帯電話で話しているのが聞こえてきました。

「○○ですけど、先日那珂川の海門橋で流された少年の遺体が発見されました。今、遺族が確認中です。はい、ええ・・・・・」

 22日のTVのニュースや、翌日の新聞で多少の情報は得ていたのですが、父親の操船するプレジャーボートから海門橋付近で友人達と飛びこんで遊んでいた少年が行方不明になっていました。その少年が遺体で発見されたらしいのです。私はそういう場面に遭遇したのは初めてですが、葬式のそれとは明かに違う、とてつもない悲しみに包まれた空間をそこに感じました。

[どうしてあの時もっと強固に反対して・・・]

 いたたまれずすぐにその場を離れたのですが、店に戻る車中色んな事を考えました。
『これが俺の友人だったら、家族だったら・・・・・・』

 その少年達が釣りが目的で来ていたのかどうかは分かりませんし、川や海で起こった事故だからと云ってすぐに釣りと結びつけるのはお門違いかもしれません。しかし、私にとってごく身近で仕事とも直結している”釣り”でどうしても考えてしまいます。その事故現場の近くに通称への字堤防と呼ばれる導流提が河口にありますが、ここは冬場などは特にシーバスを狙う釣り人で賑わう超一級ポイントです。同時に非常に危険で厳重に立入を禁止されている場所でもあります。

 どのように危険かは割愛させてもらいますが、私の友人や知り合いまた、お客さんの何人かはやはり冬場に通っていました。私がいくら口をすっぱくして「危ないからあそこは止めたほうが良いよ」と言ってもほとんど聞き入れられる事はありません。
 どうしようもないと諦めているのが実情ですが、もしそれで私の友人が事故に逢い、よしんば死んでしまったとしたら・・・・

『どうしてあの時もっと強固に反対して、ぶん殴ってでも行かせるのを止めさせなかったのだろう』
と一生悔やむ事でしょう。

[無理をせず冷静に勇気をもって・・・]

 あのうな垂れていた少年達もその家族も、どうしようも無かったとはいえ何かしらを後悔し、無理矢理にでも自分の責任の所在を探し続け自らを責め続けるのではないかと思います。極論を承知で言わせてもらえば、勝手に死んでしまった人はそれで良いんです。でも残されたほうは堪りません。どんなに悲しみにくれていても淡々と事故の処理や葬儀の段取りを行わなければならず、その後も生きている間はずっと忘れる事も出来ずに、後悔や自責の念に苦しめられ続けるのです。

 への字堤防じゃなくても危険な釣り場は沢山あります。この堤防から落ちない様にするには、高波に飲まれないようにするにはばかりを考えるのではなく、落ちたら、飲み込まれたらどうするかもきちんと考え対処できるようにして欲しいとすべての釣り人に願います。また、もし自分に有事があった場合に残された人達がどうなるかも考えて、無理をせず冷静に勇気をもって釣り場から撤退することも必要なのだと、もう一度肝に命じて欲しいと思います。

 最後になりますが、関係のないところに引き合いにだしてしまった事を亡くなった少年に謝罪するとともに、謹んで御冥福をお祈りもうしあげます。